sonoshouのまじめなブログ

情報系大学生からのウェブ見習い人生の記録

コンピュータが仕事を奪う

コンピュータが仕事を奪う 新井紀子

ひさびさに素晴らしい本と出会えた。
先輩に紹介して頂いて(放置していたのだけれども)
再度ふと気になって読むことにした。

本書の概略を述べるほどの能力を私は持っていないので、
自分が気になったところだけをピックアップする。
しかし、思い出しながら書いている部分も多々ある。
さらに、内容を自分流にアレンジしているので、見苦しい点が多々ある。

つまるところ、是非本書を読んでほしいということです。

このブログは頭の悪い私の備忘録が主目的となっています。
内容に少し深入りしすぎている点は、あとで私が読んだときに思い返せるようにしたいからです。
問題があれば即刻削除致します。


「高度な思考」とは何か

1997年、コンピュータVSチェスの達人によるチェス勝負が行われ、
結果、コンピュータが勝利を得ました。

これまでチェスの達人は、人間においての思考の達人として崇められていました。
場を読み取る能力、先を読む能力、相手の癖を見抜く能力などなど。
総合的な力がチェスの達人にはあるとされていました。

しかし、コンピュータがチェスに勝った。
私たちは「高度な思考」とは何かについて、考え直さなければならないでしょう。

この問題提起とこの後に続く考察が大変興味深かったです。


コンピュータはどうやって計算する?

コンピュータにとって簡単な問題とは何か。
たまたま私は情報系の学科で学んできたので、真新しい知識・知見はなかったが、
普段コンピュータを使う側として接する人たちには、はっと気づかさせるものがあるのではないでしょうか。

・採点済みの答案を点数順に並べる (ソート)
・任意の2都市の最短経路と時間を計算する (最短経路問題)
・各都市を全て通って起点に戻る経路のうち最短のものを選択する (巡回セールスマン問題)
・ひらがなで書かれた文章を単語ごとに区切る (形態素解析
・与えられた整数を割り切れる数(約数)を全て調べる (素因数分解

コンピュータにとって、どれが簡単でどれが困難な問題か、わかりますか?

本書では例として問題を上の5つに分けてそれぞれ解説しています。


あいまいになるコンピュータと人間の境界

デカルトは「肉体は諸器官の配置によって動くだけであるから、肉体は機械によって模倣することができる」と主張しました。

いわゆる機械論的な味方というらしい。
一方、現代計算機額の父チューリングは、

本物の人間とも同じ方法で同等に会話を行う。
その結果、コンピュータと人間の区別がつかなければ、
そのコンピュータは人間と同様の知能を持っている、と考えてよいといえるだろう。

と考えた。
これがかの有名なチューリングテストである。

私もコンピュータがいくら進化しようと、
コンピュータに人間と同等の心や性格が生まれるとは考えられない。
しかし、出力が人間らしい振る舞いをするシミュレータは作れるのではないだろうか。

SFでは人間型のロボットや本物そっくりのペット、世界征服を企むロボットなどが出てくるが、
果たしてそれらを生命と呼べるのか。
などといろいろ考えるきっかけとなった。


計算できるということ 帰納と演繹

問題を解決するアプローチとして、
帰納演繹があるが、
恥ずかしながら、本書でようやくこれら2つの違いについて理解することができた。

人間は「一を聞いて十を知る」能力の典型だと言える。
つまり、最小の経験から最適解を帰納することができる。

しかし、コンピュータは「一を聞いて十を知る」能力を得ることはできない。
それならば、「一テラを聞いて十を知る」ことができれば良いのではないか。

私が言うのもおこがましいが、この例えは大変素晴らしく思う。
何となく思い浮かべている概念を、
一般の人にわかりやすく端的に表現している。

この稚拙かつ短い文章では伝えきれないので、是非本書を読んでほしい。


「猫らしさ」を学習させる

あなたは写真から猫を探し出すことができますか?
もちろんできますよね。

なぜできるのでしょうか?
猫が猫の特徴を持っているからですよね。

猫の特徴とはなんですか?
猫は毛がはえていて、しっぽがあって、耳が立っています。

犬との違いはなんですか?たぬきとの違いは?
……。

猫を定義するのは難しく、また猫を判別することは難しい。
人間(生物)の対応力、抽象力の高さに驚かされます。


また、この節はプログラムを少し触った人に是非読んでほしい。
配列などのデータ構造、if文やfor文などの制御構文を学びました。
それでは画像から「猫」を判別するには一体どうすれば良いでしょうか。

ぱっと答えられた人は天才でしょう。
検討もつかないという方が大半かと思います。
コンピュータに猫を猫と判別させることは非常に難しいのです。

このような困難な問題をコンピュータはどのようなアプローチで解決しているのか。
是非読んでくださいね!


コンピュータの“下働き”をする人間

アマゾンのメカニカルタスクというサービスをご存知でしょうか。

メカニカルタスクとは、プログラムで実現することが難しいタスクを人間にやらせるという外注サービスなのです。
今まで上で述べてきたように、コンピュータの得意な仕事と不得意な仕事があります。
その不得意な仕事を人間にやらせようというコンセプトです。

コンピュータはより精度の高い判別を行うために、より多くのデータのタグ付けを行う必要があります。
猫が映っている写真なら、「猫」とタグ付けをするなどの単純作業です。
しかし、この仕事は前述の通り難しいので人間にタグ付けをやらせます。
そうして、多くのタグ付きデータを作成し、それらをコンピュータに入力してあげることによって、
コンピュータは精度の高い判別を行えるようになります。

まさに、コンピュータの“下働き”です。
高度な作業はコンピュータに、単純作業は人間にやらせる。
そんな未来になっていくのでしょうか。

この節の問題提起と考察も、やはり素晴らしいです。


最後に

ここで紹介したことはほんの一部です。
是非機会がありましたら、ご自身で手に取っていただければと思います。


僕なりの再確認

コンピュータ一台で様々なデータを扱え、様々な仕事を高速にこなします。
画像データ、動画データ、音声データ、表計算、文書作成、情報収集などなど。
しかし、それらが全て「0」と「1」なのです。
文字も「0」と「1」、画像データも「0」と「1」、文書作成も「0」と「1」を入力し、内部状態を変更しているだけ。

「いやいやキーボードだけでも100キーぐらいあるじゃない」
それも2進数という「0」と「1」の世界で成り立っています。

コンピュータは魔法の箱のように見えますが、
全く持って魔法ではなく、そこにあるのは「0」と「1」であり、
そこに我々人間が価値を見出しているに過ぎない。

それがデジタルなのです。